「令和」に負けるな! 新元号制定有識者懇談会
皇紀二七七九年弥生晦日。
北朝方の皇居にほど近い帝都・八重洲の某会議室に集められたのは、いずれも誉れ高き南朝方皇族の祭祀継承者と忠臣の後裔たち。
【懇談会列席者】
・竹田宮五輪王(ちくだのみや・おりんぴっくおう)
・越中宮光子内親王(えっちゅうのみや・みつこないしんのう)
・秋葉摂政宮池沼電車王(あきばせっしょうぐう・いけぬまでんぐるまおう)
・正三位左近衛大将 新田以色列守猶貞(にったいすらえるのかみ・なおさだ)
・山窩代表 T氏
・正二位権大納言 白樺畠朝臣親房(しらかばたけあそん・ちかふさ)
【なんかイベントをやると聞いて覗きに来たら、政治団体「日本会議マーク2」代表と名乗れと言われた】
・一条薫(風狂奇談倶楽部)
白樺畠 「本日お集まりいただいた皆様には、今こそ南朝の正統性を広く臣民の皆さんにアピールし、元号改正を巡る混乱を収束させるべく『オリジナル元号』を考えていただきます」
一条 「大喜利大会でしょ、要は」
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白樺畠 「せっかく決めるなら長く続く元号になってほしいですね。ちなみに『昭和』の64年というのは、日本だけじゃなく、元号を用いたことがあるすべての国の中で史上最長らしいです」
竹田宮 「前の元号の分の年数って繰り越しできないんですか? 」
新田 「大嘗祭にポイント制度を導入しましょう。来年11月に徳仁がつくったコメの美味さで最大60年加算されることにして」
竹田宮 「『六十』で良いじゃないですか、元号。六十一年、六十二年……」
一条 「『加藤一二三九段』システム」
秋葉 「最大99年まで続いてほしいという願いを込めて『桃鉄』はどうですか?」
越中宮 「『十万とんで○○年』で大幅にポイント稼ぐ手もありますよ」
T氏 「万世一系感がすごい」
新田 「みんなから愛される元号じゃないと続きませんから」
越中宮 「これは10時から並ばざるを得ない」
秋葉 「『激アツ元年』ね」
竹田宮 「『新台入荷』だとイニシャルSで『昭和』と被りますけど、『激アツ』ならGで被らないですね」
一条 「なんで急にちゃんとしたこと言うんですか」
白樺畠 「一応、元号のセオリーとして『①今までの元号と被っていない』『書類等で略称を使うことを考え、明治・大正・昭和・平成とは頭文字を被らせない』あたりは守る方針でいきましょうか」
新田 「新元号は安倍総理が強い思いを込めて発表すると言ってますから、こちらも安倍総理の思いも汲んであげると喜ばれるんじゃないですか? 」
越中宮 「じゃあ、安倍総理もまだまだ平成でやり残したこといっぱいあると思ってると思うんで、」
新田 「平成は始まってなかったのか……」
秋葉 「三部作って言っておいて絶対終わんないやつだ」
越中宮 「発表の時には急に会見場が暗くなって予告が流れます。水没した東京のすごーく遠くの方で総理と夫人がピアノを連弾してる絵です」
竹田宮 「そしたら平成のシーズン2ってことで」
白樺畠 「『平成~おかわり~』ってのはどうですか? 」
秋葉 「『ふたりは平成マックスハート』」
越中宮 「仲間由紀恵さんが可愛かったですよね」
一条 「平成のシーズン2って概念なに? 」
越中宮 「または平成の次だとみんなに分かりやすい年号にするなら」
越中宮 「1個ずつずらして『包装』」
一条 「なぜ元号にシーザー暗号を? 」
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白樺畠 「日本らしい元号を、ってことで今回は漢籍でなく日本の古典から取りたい、みたいな話もあったじゃないですか。なので漢字じゃなくて国字から二字取って」
白樺畠 「『ちつもみじ』と読むんですけど。または日本にしかない文字ということで」
白樺畠 「典拠不明の幽霊文字二字で『JIS-573B・JIS- 5457』」
一条 「発音できないという圧倒的な弱点」
新田 「これからの時代は、移民の方の受け入れなどに際して国際感覚と多様性を大事にしなければならないのでいっそ日本語をやめて」
新田 「ジャーヒリーヤ」
T氏 「漢字にする必要があったら『無明時代』と書いてルビを振りましょう」
白樺畠 「ちょっと真理感があって怖いですね」
竹田宮 「『シャクティーパット元年』ね」
一条 「思想のよくばりセットかよ」
越中宮 「皆さん、文字にとらわれすぎですよ。これからは音声入力の時代ですから」
越中宮 「記者会見の席では別室で沢城さんに待機してもらって菅官房長官をアテレコします」
一条 「さっきから越中宮さんの記者会見は見たいんだよな」
白樺畠 「『平成(CV.沢城みゆき)』がアリなら『平成(キャラクターデザイン:久保帯人)』も見たい」
秋葉 「親しみやすい元号であってほしいので」
越中宮 「安い! 」
白樺畠 「このお店、池袋と西川口にありますよね? 」
竹田宮 「Hey! Say! JUMPってあるじゃないですか。ああいう感じで将来的にアイドルグループの名前になることを見越して」
竹田宮 「すぐHIPHOPユニットの名前にできます」
一条 「Zeebraさんにフェイクってdisられそう」
秋葉 「もう元号とかじゃないんですけど」
一条 「元号とかじゃないこと言い始めちゃった」
秋葉 「これからの1か月、今上陛下が民放に映るたびに流してほしい」
新田 「ハッシュタグ#陛下がんばれ をつけてメッセージを届けよう! 」
竹田宮 「国民の注目を集めたいならこれじゃないですか」
一条 「特定の文化圏の文法やめろ」
白樺畠 「あっ! せっかく私が持ってきた熊沢天皇の肖像にいたずらしたの誰ですか? 」
竹田宮 「新元号だ? 貴様この野郎」
一条 「だから特定の文化圏の文法やめろ」
白樺畠 「そうだ、『バ~ニラ バニラ バ~ニラ改元』ってどうですか? 」
一条 「シンプルにやめろ」
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新田 「国家安全への祈りを込めた元号として『零災(ゼロさい)』は? 」
越中宮 「『災』が入っちゃってるからなぁ……」
新田 「やっぱり二文字ともポジティブな意味の字の方が良いですかね。なら、共に歩み、新たな文化を産み育てていくという意味で、」
白樺畠 「また赤いペンで書くから」
一条 「あいつさっきから思想が強いぞ」
越中宮 「ポジティブだったらこれじゃないですか」
T氏 「明るい二文字なら『安村』は」
白樺畠 「最近はそんな明るくないんじゃないですか? 」
越中宮 「これからは地方に目を向けていくべきだと思うんですよ」
白樺畠 「見たことないんですけど、これ今アツいんですか? 」
越中宮 「最先端のコンテンツです。めちゃくちゃ治安が悪い。地元のやつ見たら『あそこの大阪屋のパン屋にいる女、中学の時マジでビッチだった』って書いてあってそんなピンポイントな情報拾える!? って思って。最近毎週末、爆サイ見て二日間終わる」
一条 「どんな週末なんだ」
秋葉 「最先端のコンテンツだったらこれはどうですか? 」
白樺畠 「古文だよ」
一条 「昨日生まれてはじめて電車男見たのか」
新田 「確かにこのご時世、手書きで元号が発表されるとも思えませんから」
竹田宮 「安倍さんの強い思いが反映されるならこれでしょう」
白樺畠 「……『しょうけい』かな、これは」
T氏 「じゃあ昭恵(しょうけい)の強い思いを反映して」
一条 「やめろ! 」
秋葉 「ダイアサね」
新田 「ガンジャ元年」
白樺畠 「ダイアサが解禁されるなら」
白樺畠 「たまきさんを返してくれという祈りね」
越中宮 「ちょっと深みを持たせた元号で」
一条 「だからダイアサじゃん! 」
白樺畠 「『どんなときも元年』」
一条 「ダイアサじゃん! 」
新田 「『俺はやってない! 元年』」
一条 「お前は誰だ!? 」
秋葉 「やってる奴の言いぐさなんだよ」
新田 「じゃあやっぱり初心に戻って」
竹田宮 「平成を代表する著名人」
新田 「デンダイです」
T氏 「新しい時代の目覚めということで」
白樺畠 「字体が怖い」
一条 「酒*薔薇のフォント」
白樺畠 「では、候補も出揃いましたので投票に移りたいと思います」
一条 「なにも出揃ってないぞ」
白樺畠 「この中から一人一票、投票してください」
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「内閣官房長官 新田以色列守猶貞より新元号の発表です」
「新元号は」
「これを持ちまして、元号発表記者会見を終了いたします。野次は、新元号を発表してるんですから野次はやめてください。産経新聞、チャンネル桜、虎ノ門ニュース以外のメディアの質問は一切、お断りいたします」
後後醍醐天皇について ABOUT EMPEROR GOGODAIGO
壱.大陸へ
北朝方による「正史」では、後亀山天皇第三子恒敦親王に始まる南朝正統・小倉宮家は、三代教尊王が禁闕の変に連座し、配流先の隠岐で薨去されたことで断絶したと伝えられます。
しかし実際には、教尊王は、後醍醐天皇を信奉する現地の武士や海賊らの協力を得て隠岐を脱出し、ガンダーラを目指して大陸に渡ったのです。
教尊王は当時、北元・韃靼と呼ばれた北部モンゴルにおいて王に即位します。
十五世紀中期の北元は、十七代ウスハル・ハーンの死によって世宗クビライの皇統が途絶えたことで、モンゴル部族とオイラト部族の間で、皇位継承を巡る争いが激化していました。
そんな中、初めて非チンギス・カン後裔のハーンとなったと伝えられるエセン・タイシこそ、教尊王その人なのです。まさにモンキーマジックと言えます。
エセン・タイシが当初、ハーンの号でなく中国由来の「タイシ(太師)」を名乗ったのは、言うまでもなく中国宋代の政治を理想とした父祖・後醍醐天皇の影響ですし、「エセン」の名は「曳船」すなわち“船を曳いてこの地まで来た王”だと暗示するものと考えるのが、至極当然と言えるでしょう。平民の皆さんでもご理解いただけると思います。
弐.欧州へ
教尊王の一族はその後、ユーラシア大陸を横断し現在のスイスにたどり着きます。
彼らはそこで姓を「鷹の城」“ハプスブルク”(Habichtsburg:高地ドイツ語)と改め、政略結婚を繰り返しヨーロッパ随一の名門貴族に登りつめていきます。
これが南朝の正統・ハプスブルクの宮家の成立です。
説明するまでもなく、「鷹」とは古代日本において神聖な鳥であり、鷹狩は天皇をはじめとする貴人にのみ許された「王の遊び」でした。後醍醐天皇が模範とした嵯峨・醍醐天皇も鷹狩を愛したと記録されています。
また、「タカ」の音が教尊王も通字を受けている後醍醐天皇の諱「尊治」の「尊」に通じることも、多少の知性がある人間ならば気づいて当然です。
ハプスブルク家のローマ王(=神聖ローマ皇帝)の独占世襲化に成功した15世紀末の当主フリードリヒ三世は、父祖の為しえなかった王統確立という栄光の時に、南朝の忠臣・楠正成公を想ったといいます。
そしてフリードリヒ三世は自身の王子に、正成公を偲ぶ名を付けました。
「今、楠(くす)見るらん(この姿を今、楠木は見てくれているだろうか)」
……そう、神聖ローマ皇帝・オーストリア大公・ブルゴーニュ摂政の称号を独占し、ハプスブルク家の黄金期を築くマクシミリアン1世(ハプスブルクの宮マクシミリアン殿下)です。
Will take you on a journey. A never ending journey.天下統一を目指す南朝方の終わりなき旅は続きます。
ハプスブルク家の正統ハプスブルク=小倉宮家の相続人である恒尊=フリードリヒ=ヨーゼフ=エカチェリーナ=ハプスブルク=フォン=小倉宮殿下はこのたび、今上陛下御退位および元号変更を巡る、臣民の混乱に非常に心をお痛めあそばせており、自身が「後後醍醐天皇」として即位することで民の平安を守らんと志しておいでです。